(その4からつづく)
【カトー】
いつも通り、最後はカトーについてです。
ショーのすぐ後にはセールスミーティングが開催されましたし、スマートコントローラーも発売されました。
その他、決算に向けて(?)発売が迫っているアイテムが多いので、画像としては鮮度がイマイチであることをあらかじめお断りしておきます。

まずは485系200番台です。
想像どおりのカトーらしい485系で、貫通扉もそうそうこんな感じ。
当方は6両セットのみを手にして日本海縦貫線をイメージした列車で遊ぼうと考えています。
この200番台の登場により、485系は顔の形のバリエーションとして0、200、300番台が揃うことになります。
これらの基本セット(0番台は「雷鳥」ネームであり、さらにクロ481入りは「ひばり」ネームですが)を基幹にして、適宜2両セットやサハ、サロを“共通増結車両”として保有して加えていくスタイルが、これからの揃え方としては合理的なのかも…という話題になりました。
20系客車では既に「ナハネ20 6両増結セット」がリリースされています。
要はそういう視点が485系でも必要になってきた頃合いなのではということなんです。
一方で、先日のキハ58系については「できることならばネームドセットにしてもらいたかったナ」と未だに思っていて、そこに矛盾があることは承知の上なんですけど、どうしてそう思うのかは、もう少し自分の中でも整理、分析してみないといけません。

東急5000系〈青ガエル〉は6月発売予定。
5000系の中でも後期形とされるタイプだそうで、カトーの公式アナウンスによれば、先頭車の床下機器が副都心線対応になっているんですって(わからん!)
プロトタイプについては、懐かしい旧5000系の面影を求めるには少々無理のあるラッピング車ですし、今回の設計上の差異は“5000系ファン”でなければ理解できない作り分けのような気がして、いずれにしても当方の琴線には触れず。
5050系が発売されたときは、東横線だけでなく港町・横浜の空気感のあるネタで、素直に「面白そうだな」って思ったものですが、ここまでくるとなんだか先行した他社(グリーンマックス、マイクロエース)に対するドミナント戦略のように見えてしまい、なんと言いますか、カトーにしては「大人気ない」。
床下機器へのこだわりはあるに越したことがないんだけれど、エネルギー(設定・新規金型)を注ぐ場所、ネタはもっと違うところにあるんじゃないかなぁと考えてしまいました。

EF65PFはJRマーク入りでの発売。
今回は前回の国鉄時代仕様の、グダグダなナンバーパーツが改良されて封入されます。
当方はここを楽しみにしていて、やっぱり機関車の顔の表情は半分くらいナンバーのフォントや大きさ、文字間隔でキマると思っています。
逆に言えば、それだけ設計を台無しにしてしまう重要なポイント、ということと言えます。
オリエントエクスプレス’88はJRマーク入りのPFが牽引していましたから、たとえその程度の差異であっても「必要な機関車」と言えそう。
そんなPFでした。

ただ…
「瀬戸」はもっと後でもよかったんではないかなと。
2008年の14系14形「さくら」フルリニューアル後は、全てのカトー製ニューブルートレインを手に入れてきましたけど、今回ばっかりは「手に入れよう」と思う気持ちになれませんでした。

鹿島臨海鉄道の「ガルパン」4号車。
繰り返しになりますけど、劇中のイメージを再現するなら、この度再生産される通常品を手に入れるべし。

「わーい、キハ110系の200番台だー!」と思っていたら1/80の方だったりするのです。
残念。
「ガワ」と「側面ガラス」の形を起こしてくれればNゲージでもできそうなのに、なぜか完全新規で大きいやつを設計されてしまいました。
おそらく1/80スケールの普及をさらに推し進めようということでの単行運転可能な両運転台形気動車が選ばれたのでしょうが、そういう狙いならば当方としてはキハ110のショーティーであるキハ100をネタとして選択します。
急カーブに対応するために、物理的に当該カーブを走行できることだけを検証するのではダメで、そこに破綻のないスタイルがあるようにしないとダメでしょう。
おそらく単行でもオーバーハング気味でしょうし、2両編成にしたら貫通路がミッション・インポッシブル。
クモハ12のような風情は感じられそうにありません。

「あいの風とやま鉄道」の521系。
先行したJR西日本の521系が2次車だった訳はここにあり?
それだけでなく、例えば223系2000番台には多くのファンがいるのに対して、225系には「イマイチ」という声をよく聞きますから、その点でも2次車という選択は間違っていなかったということのようです。
「関空・紀州路快速」のようなシルバー1色のマスクと、爽やかな「あいの風」を表現した控えめなサイドデザインがいいですね。

長野色でフルリニューアルを遂げた115系1000番台。
今回は湘南色、2001年頃の小山車だそうで、要はJR時代のクモハなしでの企画。
JRマーク入りはある程度許容しますけど、クモハが無いなら今回はスルーで、「4両セットだけでチンマリと」とも思いましたが、やはり湘南色のクモハ入りを待ちます。
時代についてもどうしてそんな頃を切り取ったのか、よくわかりませんでした。
その辺、少し前まではポスターだけで説得力があったんですけど。

165系「佐渡」。
設計段階でのイメージ図が情報公開されました。
13両編成なのに基本セット7両、増結セット7両(?)
このセットの特徴として、売店車サハ164かビュッフェ車サハシ165を「選択して」編成に組み込むという点があります。
だから必ず1両は待機しているということになります。
我々ユーザーはそんな1両分が価格に反映されているということを押さえておく必要があるでしょう。
最近この手が多くなりました。
それから、案の定「サハ164」という異端車については「佐渡」よりも「アルプス」として見ているユーザーが多いようで、そういう声がチラホラと聴こえています。
今回の「佐渡」製品化に当たっては、新規金型を設計して送り出す要素が少なかったのか、どうもニッチな設計が強く見受けられるような気がしていて、ユーザーとしては「佐渡」に思い入れがあっても、そのこだわりを見て「ふーん」という気の抜けた反応をするしかなかったりします。
前述の東急5000系で言いたかったことも、そんな点なんですよ。
どこかマニアックな(失礼)、細かい差異に関する説教を受けている感じ。
それはそれで大事なんですが、そういうことはこれまでのカトーを見ていると優先度として低かったような。
また、165系「佐渡」が出てきても、181系「とき」は市場で枯渇しているようですし(数年前に再生産しましたけどね)、10年前の製品・10系急行「能登」なんていうアイテムを中古で探すことも困難でしょう。
唐突に「佐渡」と言われても、これまで買い続けたユーザーだけが得するような売り方は、結局のところ上越線の世界が広がることもなく、中途半端な打ち上げ花火になってしまいかねません。
人間臭い昭和の急行列車でもある訳ですから、それら以外の何か…も添えていただき、風景やサミットを越える路線としてのアピールをしてもらいたかったと、そんな感想です。


こっちも「やまぐち号」ですよ(^ ^)
トミックスと同じように、設計段階のイメージ図、それからその3Dプリンター出力サンプルが情報公開されました。
こちらにもこちらなりのこだわりがあるようで、例えば台車付近の車体裾の張り出しは、塗装の仕方にも気をつけながら生産したいとのことでした。
僅かな部分ですが、ここはトミックスとで観察力に差が見えそうで、ユーザーとしてはどちらかを選ぶポイントになるかもしれません。

今回「やまぐち号」の牽引機として設定されたのが、D51 200。
既に成熟段階にあるカトーのD51ですから、この程度の着せ替えであれば設計にそれほどのエネルギーはかからなくなっているそうです。
ATS車上子の位置はドローバーにぶら下がるようであり、特徴がありすぎ。
電車などと違って細かい差異は表現しないとダメなのが、メカメカしさを売りにする蒸気機関車の宿命でしょう。
実車で音も録れることですから、サウンドカードの展開にも期待できそうですね。
それから、既にアナウンスされているとおり、先行して8月に発売される特別企画品は、特別なスリーブであること“だけ”が特徴であり、車両が違ったり、特製パンフレットが付属するとか、そんなことは全くないそうです。
当方はスリーブという部材に、傷をつけたり角をぶつけたりする消耗リスクを感じていて、それが特製であるというところに不自由さを抱えてしまうことを見通しています。
なので、ゆっくりと9月発売の通常品を手に入れようと決めました。
よくあることですが、トミックスの限定品も、すぐに傷みやすいダンボール系のスリーブ(?)に丁寧なイラストが印刷されていて、ぶつけるとすぐに穴が開くじゃないですか。
あんな危なっかしい紙質なのに限定品の要素を入れてしまって、なんなんだろうと思います。
いっそのこと、自宅にあるスリーブを全て捨ててしまったら、妙な気苦労も無くなるし、車両出し入れも楽だろうなーと思いませんか?

既に出荷されている「スマートコントローラー」です。
早くも動画サイトにはそれぞれのユーザーの使用感がレポートされていますから、まずはそちらを参考にしてください。
この市場では「ワイヤレスで、あるいは任意の位置で列車の運転を楽しみたい」という欲求がだいぶ前からあり、運転会や集合式モジュールレイアウトではその需要が特に高かったように見ています。
例えば、脱線した列車を復旧させるためには、どうしてもコントローラーの位置と脱線箇所の位置が近い方が良い訳で、当方の経験でも2人がかりで大声を出し合って作業するというスタイルが当たり前でした。
こんな需要を読み取ったのか、トミックスでは「TCSワイヤレスパワーユニット」という制御機器を先行して発売しましたが、iPhoneを皮切りにスマートフォンやタブレット端末が普及すると、Bluetoothという無線規格も標準装備として普及するようになり、鉄道模型専用にハードとしてのコントローラーを開発する必要性が薄くなりました。
後攻のカトーは正にこうして、単なる四角い箱だけがデバイスとなった訳です。
それだけ、技術進歩のスピードは速いということなのでしょう。
今となっては、トミックスのコントローラーを買うユーザーはいないと思います。
後は「自宅ユーザー」が“ワイヤレス”という点にどれだけの価値を感じとるかどうか…。
当方、自宅のレイアウトで遊んでいるときにiPhoneで撮影することがしばしばあるんですけど、レイアウトや車両の作業に夢中になっていると、部屋の中のどこにそれを置いたのか分からなくなることが多くて、その都度あたふたしています。
なので、狭い空間では、コントローラーの位置は定まっていた方が、結果的に使い勝手が良かったりしないかなと、そんなことも考えてしまいました。
もちろん、コントローラーのツマミを物理的に動かすことで運転している気分にもなれますし。

決してこの新しい技術を否定しているのではなく、要は、自分の趣味のあり方に似合っているかどうかを考えてから買ってみてもいいんでは、というお話です。
とはいえ、狭い部屋ですから、制御機器がダウンサイズされるというのは、魅力的ではあります。

せっかく駿州までやってきたので、無理を言って、発売前の「飯田線の旧国」、485系、DD51、キハ110系などのサウンドカードを全て実演してもらいました。
スマートコントローラーはサウンドボックスの制御には適しているようで、ファンクションボタンも大きくなるし、音と連動した車両制御もやりやすくなるようでした。
それにしても「音」という新しいプチ市場を開拓してしまったことには驚きというかなんというか。

最後にこんな画像をご覧いただきましょう。
何を言いたいのかと言うと「カトーには、かろうじてまだこうしたDNAも残っているみたい」ということなんです。
トミックスは「ヨンサントオ」という“記号”で企画化し、ユーザーにその魅力を訴えていましたが、こちらは上野駅の風景をダイレクトに伝えているので、こんなアクセサリーを見ていると目指す遊び方がよくわかる。
当方は以前から「カトーには必ず遊び方の提案がある」と申しており、やがてそれは「説法」とか「説教」などという言葉に置き換えたりしました。
こうした語りかけが消えて無くなると、どんな新製品も無味無臭でつまらないもの、回転寿司のレーンで運ばれてくるカサカサの寿司のような感覚になってしまいます。
興味のない人に、いかにして興味を持たせるのか。
だってねぇ、寿司が載る皿の手前にはPOPの書かれた皿が回るじゃないですか。
そこにはただ単に「あじ」とか「ぶり」と書かれているだけじゃダメで、そんなネタを仕入れた理由、仮に近海物ならば漁港にいる錯覚に陥れるように巧みに産地を説明して、思わず顧客に取らせてしまうような、そんな説明するべきなのです。
そんな説明には人を振り向かせる力、「文化の力」が求められる、ということは言うまでもないでしょう。
◻︎ ◻︎ ◻︎
ひと通り見学を終えたところで昼過ぎとなりましたので、特別顧問を迎えてのランチとしました(どこも満員で大変でしたねー)。
ようやく見つけたレストランでは「やっぱり大きい蒸気機関車はイイねぇ」とか「青い客車は…ね」とかそんな話で盛り上がり、北の扇形庫から先生はパーツのパズルで脳内の中がイッパイになっていたようです(いつものことです)。
そんでもって水色の電車の話題にもなったりして楽しい話題が続いた後、今回のショーを俯瞰した総括的なテーマに話が及びました。
今回、鉄道模型メーカー各社の展示内容から感じたことは、メーカーは模型そのものだけでなく、模型を楽しむためのインフラ系により多くのエネルギーを注ぐようになった、ということなんです。
マイクロエースはオオカ商事のスピーカー、トミックスはTNOSとなりましょうし、ZAIZENの「TRAIN TECH」システムはその最たるものであり、カトーはスマートコントローラー、という具合。
なんてったって21世紀ですから、新しい技術が趣味の世界で吸収されていくことは、当たり前であり、止めようとするものでもないと思います。
ただ「こんなことができるようになった」ということが、そのまま楽しみの増幅につながるかどうかは微妙です。
便利になることが味気ない、無機質な結果を生むこと、「こんなはずじゃなかった」と思うことはよくある訳ですから。
「文明」が「文化」とイコールでないという事実は、正にこうした局面で気づくことができます。
我々ユーザーは、趣味の世界にいるからこそ、「文明」的なブレイクスルーをそのまま額面通りに受け取って、それで満足すべき、いや「満足したことにする」べきではありません。
それらの技術に各々で「文化」的な価値を見出してこそ、本当のステップアップがあるのです。
技術の進歩と新しい遊び方の提案はそれでよしとして、その技術が、果たして自分が持つ(持っているはずの)文化的価値に寄り添ってくれる技術なのかどうか、そんなことをもう一度考えていきたいですね。
* * *
特別顧問とお別れをし、帰り道では静岡駅ビルの模型店を偵察。
近年はこの3人で模型店を巡ることも滅多にないようになっており、「せっかくだから寄っていこう」ということになりました。
久しぶりの偵察はそれぞれが好き勝手なこだわりを披露し合って、ゲラゲラ笑いながら狭い店内を行ったり来たり。

「こだま664号」が新横浜に近づく頃には、これからのアナログ的なつながりをもう一度真面目に見直そうかと、そんな話題で盛り上がりました。
こういうつながりこそ紛れもなく「文化」であり、これからの時代はユーザーとして、いや地域(職場ではないという意味)に暮らす人としての“財産”となるはずですから。
こうして、毎年恒例の日帰り遠足は終わりました。
ショーの後、鮮度が落ちる一方の文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
ではまた。
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- 2018/05/21(月) 08:10:00|
- 鉄道模型イベント
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