(その2からつづく)
【カトー】
(上はカトー 、下はトミックス)「その2」で触れたとおり、トミックスとの競作となったカトーのオハ35系4000番台「やまぐち」。
こうして見比べてみても、その解釈に決定的な差異は感じられません。
例えば展望デッキの手すりを表現する方法とか、です。
ただし、テールライトの導光方法の設計思想には違いがあるかもしれません。
ライト付近のディテールに注目しでください。
それから、カプラー付近についても違いが見られますが、これは両メーカーが導入している共通パーツによる差異とも言えそうです。


クーラー付近も写しておきました。
模型じゃないとなかなかわからない屋根の上でして、模型というよりも実車としてよくここまでやったなぁと言えるクーラーのごまかし方(笑)
いすみ鉄道のキハ20もそうですけど、今の技術で103系なんかを復活させたら大事件になりそうですね。
旧型客車の模型については、トミックスもオハ35系をリニューアルし、さらにはスハ43系、オハ61系、スハ32系を製品化していますが、金型の精度の問題なのか、ひどいヒケや車体のバナナ現象が見られ、そんなにいい製品群とは思えないまま現在に至っています。
つまり、トミックスの旧型客車は当方の選択肢に入っていないのです。
以上は「旧型客車」の話。
でも、ウインドシル・ヘッダーの付いた車体は相対的にカトーの方が良いようで、特にシルヘッダーのエッジの尖り方を見てみるとその思いは強くなります。
そのあたりまで見比べてから選んでも遅くはないかなというのが今回の競作に対する当方の見方。

D51200という旬なアイテムが確実に用意されている点で、さらにはC571を手掛けるにしても朝飯前な点で、気持ちはカトー製品に傾きつつも、納得できる財政出動ができるよう、ギリギリまで見極めてみます。


さて、221系リニューアル車に話を移しましょう。
1989年に誕生したJR西日本アーバンネットワークの立役者である221系。
模型の世界でもカトーが90年代初期に打ち出した「トレンディ&トラディショナル」の中で製品化した代表的なアイテムでした。
旧製品は、初回品に対して①JRマークの印刷表現、②ヨーダンパ付き台車化と強化スカート化という二度のリニューアルが施されましたが、流石に現在行われている実車のリニューアルにまで旧製品で対応させるつもりはなかったみたい。
前面の行先表示などは非点灯でしたからね。
というわけで、今回、模型としてはフルリニューアルされます。
4両編成が模型化されますので「みやこ路快速」などにも応用できますけど、4両編成ですので例の転落防止ホロが備わるところに賛否が集まりそうです…。
先頭のカプラーもちゃんとした電連パーツが起こされました。
このパーツはいろいろと応用はできそうです。

上から見てみました。
223系や225系と比べるとフロントの傾斜角度が大きいため、転落防止ホロはどこかボディから浮いて見えます。
この辺りにユーザーによる見え方の違いがあると思っていて、嫌いな人はとことん嫌いなのだと思います。
当方も、当初はどうしても受け入れられませんでした。

とはいえ「機能性の美学」は存在するもので、例えば蒸気機関車のデフレクターは好例といえましょう。
最初は奇妙なものを取り付けたというムードだったはずなのに、見ているうちにいつの間にか、あの2枚の板がどういう形で付いているかということで蒸気機関車のカッコ良さが語られるようになったのです。
221系にも、併結運転を考慮しない奈良の6両編成と8両編成には転落防止ホロが付かないでリニューアル施工されましたので、そういう編成も製品化されるといいですね。

側面の方向表示器は印刷で表現。
その他標記類は旧製品よりも情報量が多くなりました。
この秋には発売される予定だそうです。
寂しいカトーの新製品アイテムが続いていたので、少し期待を大きくして待つこととします。
基本セット×2、増結セット×1を予約済です。
この221系に続いて、223系2000番台の顔面手術もお願いしますね(トミックスの方が先?)

EF80のヒサシがない方です。
ヒサシ付きと24系「ゆうづる」が製品化されて約10年が経過しましたので、ずいぶん待たされました。
今度は20系客車との組み合わせでの登場ですが、24系はもちろん、青い旧型客車とも合いますので使い道は多いと思います。
次はいつ発売されるかわかりませんから、スペアを含めて2両くらいは欲しいという気持ちもあります。

165系「佐渡」からサハ164。
窓の寸法さえ正確に計測されていれば問題ないと思っています…。
未だに「アルプス」にしか需要が見いだせていなくて、それならASSYでこのサハだけを調達すればいいのに、「佐渡」の基本と増結を予約している自分に修行の足りなさを感じています。
それでも、上越国境を在来線で越えるときの高揚感は模型の世界で保存しておきたいもの。


近郊形ホームDX。
これまでの製品は、照明を取り付けるには要工夫というところで、ライトユーザーにはやや難解だったようです。
今回の製品では、まずホーム下に通電用のレールを組み込んでユニジョイナーで接続させることでホーム全体の電源を確保。
各ホーム部ではホーム下から屋根内部に配線した上で屋根内部にもレールを組み込んで通電させ、屋根裏の任意の場所にライトユニットをまたがせてホーム上を照らすというもの。
お座敷運転をも考える必要がある上でのアイデアだと思います。
また、自社で製造しているレールを活用してしまったところも面白い。

時代としては「現代」となるホームですので、やはりライトユーザー向けといえましょう。
LEDの技術で、とうとうこうしたギミックまでがメーカーデフォルトとなりました。
従来製品を大量に買われたユーザーも多いと聞きますが、どういう売れ方になるでしょうか。
貸レイアウトのオーナー様は設備を更新するために大量にお買い上げかも。

最後に、謎のパンダをご覧いただきます。
線路際ギリギリでくつろぐファミリーに待ち受ける運命は全くもって不明。
どういう販路で展開して、どういうユーザーがこの製品を待っているのだろうかと考えるだけでスリルとロマンがあります。
スケールは1/80のようですから、トラに載せればユーモアも生まれましょう。
ただし、扉が開くワムに載せればビジュアル的には国際問題に発展しそう。
いずれにしてもストレートに取り扱いを思い浮かべることは難しそうなアイテムのようです。
「国際鉄道模型コンベンション」ですから、さすがに“パトレイバー”はありませんでしたが、こういう試作品や情報がチラホラと見えるところに最近のカトーの様子が見えてくるようで。
それでいて「7匹セット」ですからね。
「7匹基本セット」と銘打たなかっただけまだアレですが、鉄道模型屋としての呪縛からも抜け切れていないみたいで、どこか中途半端。
どうか品番が「10-」で始まらないようにお願いしますネ!
□ □ □
会場を出た後は、特別顧問をお迎えしていつも通りの時事放談。
静岡のときに続いて、最近の鉄道模型の世界を俯瞰した意見交換をさせていただきました(ありがとうございました)。
鉄道趣味の世界では「上流」にいる方々の世代交代の波が大きく、鉄道模型メーカーだけでなく、鉄道雑誌や鉄道模型雑誌の送り手の中にもそうしたニュースが混ざるようになってきました。
鉄道を趣味の対象にしていた方々が上流にいる限りは、それなりに質の高いコンテンツが流れてきましたが、それももう終わりのようです。
具体的には語りませんけど、あちらこちらでそんな現象が見られませんか?
圧倒的な知識と在庫を持っていた小売店がなくなったり、定年を迎えたということで人気のあるブログの更新が途絶えたり。
ごく最近では、雑誌主催のレイアウトコンペが中止になったりしていましたが。
鉄道模型メーカーについては、もう…
挙げればキリがないですね。
当ブログでは数年前からこうした点を繰り返し語らせていただいてきました。
ですから今、上流から流れてくるモノには、送り手が無表情で商業的に淡々と流しているものが既に相当数混ざっていると見ています。
企画(ネタ)の選び方だけでなく、品質にもその点を感じられるじゃないですか。
あんな不良品とか、こんな“仕様”とか。
本当にその車両が好きで企画しているのなら、そんなおかしな状態で流れてくるはずがないのですョ。
当方のような「遊び方の提案」を楽しみにしてきたユーザーは、まずは送り手の意図を見分けるスキルが必要です。
どうして今、これを製品化するのか。
今、買っておくと、後で面白い展開につながるのか。
自分なりのワールドがあって、そこに取り込めるモノだと思って拾えるのであれば、それでもいいでしょうが、そうしたユーザーはほんの一部でしょう。
だから、やはりこうしたスキルはあった方がいい。
新製品が告知されるポスターを見て、あるいはセールステキストを読んで、企画者の頭の中を見てしまいましょう。
そして、ダメならダメと言い、買わないでおく。
いよいよこれからはユーザー自身が「価値」を流さなければならないようです。
そして、流す方向は「下流」ではありません。
「上流」へ流すのです。
我々ユーザーは、今そうした分岐点に立っているということを改めて知るべきでしょう。

時事放談の後に会場を出てみると、そこにはナントカ家具のナントカショールームというやつがあるわけです。
2代目が、創業者の路線をネガティヴに捉えて、その数年後には昨今の報道のような惨状です。
結果から批判することは誰にでもできますから、批判し過ぎないことを意識して…
当方としては、家具の楽しみ方とか所有する価値とかを、ニトリとかイケアに走っている消費者に再認識させるくらいの説法をしてもらいたかったナと、ただそう思うのです。
家具屋でありながら「これからの家具はこんなもんでいいの」という感覚になっていて、それはつまり従来の家具の価値を見出せなくなっているということなのでしょう。
こういう話、鉄道模型の世界にも当てはまりそうです。
「これからの鉄道模型はこんなクオリティでいいの」なーんていう風に。
なんでもかんでも鉄道コレクション。
おいおい、ヤバいぞ。

その点、マイクロエースがこんなゲテモノをお土産にすると、「ワラビの狂犬」が復活したようでなんだか嬉しかったりするのです(笑)
開場後、しばらく経った頃に入口を通過したら、プラカードを持ったOさんから最後の数枚のうちの1枚の整理券をもらいまして、その数分後には思いもかけずにあっさりと手にしたという訳です。
こういう無計画な買い物はしないと決めておきながら、久しぶりに破壊力満点の企画に接し、また価格的にはカトーの電気機関車1つ分くらいなので「まぁ、いいか」という気分になってしまいました。
なんとなく、10年くらい前までに味わっていたワクワク感を再び味わうことができそうな気がしたんですよね、直感的に。

このキヤ92を手にしたユーザー全員で、全国のポポンデッタのレイアウトで高速運転でもしてみますかね。
ちびっ子たちには、この赤い物体がどのように見えるのでしょうか。
そのうち「てつどうゲテモノのせかい」なんていう400円の絵本が発売されて、ちびっ子たちがこぞって見るようになったりして。
「プラレールのマイフ97が欲しいよー!」とかいった泣き声が聞こえてきたら我々のミッションはコンプリートです。
是非ともそうしなければならないのです。
そーゆことです。
ではまた。
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- 2018/08/27(月) 23:00:00|
- 鉄道模型イベント
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| コメント:7
いつも詳細なレポ&焦点を定めた評定に頷いています。
「模型屋」というと狭い店内に少ないショーケース、そしてごちゃごちゃの在庫と気難しいながらも知識豊富な店主というイメージでしたが、今や“総秋葉原”化というか画一的な店構えしか思い浮かばなくなりました。
翻って私たちユーザーも相次ぐ新製品にとめどなく飛びつくという構図を卒業しようとしていて、上流の方々は必死に流れを継続しようとしている、と感じます。
最近はデジタル技術の応用が印象的ですが、市場もユーザーも画一的になっていくのでしょう。
私は自分の手を動かすことに主眼を置いているのであまり関心が向かず、むしろ板キットの廃盤や缶スプレーの品質低下と入手難が心配です。ただペースは確実に衰えているので気が付けば古い世代に取り残されているかもしれません。
趣味の本質・本懐を失わないための芯を強く持つことが、これからの時代は必要になるのでしょうか?
しかしキヤ92、こうした破壊力の大きな製品が投下されるとあっけなく崩壊してしまいそうです。
- 2018/08/29(水) 22:41:25 |
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- ホビぽっぽ #HuJ7OprI
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平成もJR誕生も30年経てばユーザーもメーカーの中の人側も好みが地域・時代的に分散するのは必然ですし、
ラインナップがばらけるのはしょうがないと思いますよ。
あと683系スノラビ再販や221系での新快速色の帯色の修正からして、下流から要望を流す動きは既にあるみたいです。
常磐線ものだと415系のフルリニューアルとスーパーひたち時代の651系の(部分的・フル問わずの)リニューアル再販に期待しています。
前者は国鉄・JR・九州譲渡後の各時代で並べられるものが多いですし、後者はライトスイッチ及びヘッドマーク交換可能にすれば
遊びの幅が広がるので欲しいですね(あと常磐線を語るうえではやはり651系は外せない)
(あと業界的によくある他社便乗商法でトミックスの485系ひたち色HG製品化が期待できます)
- 2018/08/29(水) 23:08:02 |
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