しなのさかいの駅前広場

415系、売れているのかなぁ。

第20回国際鉄道模型コンベンション(その5・完)

(その4からつづく)


【カトー・その2】



今回は「トワイライトエクスプレス瑞風」のテストショットをたくさん見せていただきました。
このため、いつもとは異なりますが、カトーについては「その2」も設けて、画像を多目に見ていただきます。





まずは、斜め上から先頭形状を。





正面から。





カーテンを別パーツで表現する試みは「オリエントエクスプレス’88」以来、だそうです。
この点は、見たところトミックス製品には無さそうな配慮でした。







今後、屋根上のクーラーや水タンクなどは複数の塗料で塗り分ける予定だそうです。
それにしても、ダークグリーンの光沢が素晴らしい。

あ、説明が遅くなりました。
この「瑞風グリーン」は、本番を考えての「本気」のイメージになっているそうで、グリーンの色調を変化させてボディ上の明暗を調整するのではなく、メタリックの粒子の量を調整することで、実車と同様に光で変化するボディ各所の色調を再現することに成功したそうです。
この後にはエンブレムや帯、各種標記類の印刷が入るそうで、その完成状態は約1か月後には見ることができるようですから、楽しみにしていましょう。











こんな風に光の反射具合が心地よく、見ていてウットリ。
「ななつ星in九州」のときと同じかそれ以上に、工芸品のような美しさがあります。





内装については、室内灯のプリズムを専用化してあらかじめ組み込んでしまっている点に注目。
この手法は小田急ロマンスカー3100形NSEやベルニナ急行でも採用されていましたね(「ななつ星in九州」では採用されませんでした)。
当方、この手法は大好きなんです。

それからホームページでは「客室は扉を開放して左右が見渡せる昼間の状態を製品化」とありまして、別パーツ化されていたトミックス製品とは違い客車ドアはそもそも表現されていません。
定員数の少ない列車ですから、通路を行き交う乗客も少ないそうで、ドアを締め切るよりは開けて景色を楽しむ傾向にあるとか。
そうしたことまでを取材・観察して出した結果を設計に反映させたんだそうです。
カトーとしては、かつての「北斗星」のコンパートメントとは列車としての性格が違う、ということを、このような点でも掴んでいるョ、ということなのでしょう。





通路部分のプリズムは外に向かってギザギザになっているのが分かります。
こうすることでプリズムの断面を複数設けることができ、ダウンライト調に、縦型のスリット窓に合わせて等間隔の光源を生み出すことに成功しているのです。
つまり、LEDたった1個だけでもプリズムの設計で光の流れ方を自在に操れる、ということ。
トミックス製品ではこの部分をどうやっていたかな?
設計ノウハウの深みが生むマジックでして、とても面白いですよね。
前面の点灯箇所数分のLEDを基板に配列させるグリーンマックスの考え方とも対局的な設計思想です。









その他、パッと見では分からない不思議なカットのオンパレードとなっている専用プリズム。
よく見ると、カーテンとカーテンの間、専用バルコニーにもプリズムが上から下に降りてきていて、キチンと下に向けた光源が生まれています。
どのプリズムのカットも灯火させるための意味を伴って設計されており、「安易にLEDを増やして…」という発想が皆無であるところが模型として興味深々なのです。
念のために繰り返しますが、各車両の室内は「LED室内灯クリア」たった1個で各所が点灯します。
公式ホームページでは電球色タイプが推奨されていますので、今のうちに各自チェックしておくように(笑)





先頭車展望室の表現はカトーとしての標準的な仕様でまとめられています。
これは1号車でカーペットの色は〈青〉。
10号車は〈緑〉となるそうです。







ところで。
外観に資することであれば、実はカトーも細かくやっています。
ワイングラスなどをガラスパーツに描くなんて今までになかったことですよ。
ココ、会場で見逃した方も多かったんではないでしょうか。
タイミング悪く(?)トミックスとの競作となっていますが、カトーが企画・設計において「瑞風」を見つめる視線が分かる部分ではないでしょうか。







展望デッキの点灯具合。
今まで気がつきませんでしたが、かつてのマイテと同じような雰囲気がありますね。
赤く灯火したテールライトが郷愁を誘います。



カトーとしては、実車の「ノスタルジック・モダン」のコンセプトと雰囲気を再現すべく、徹底的に「外観」にこだわって、その「美しさ」を求めたそうです。
ですから、塗料と塗装方法はもちろん、例えば設計においてもボディとガラスの合いを極めて、光が反射したときにはその線がボディとガラスとでズレるようなこともないようにと(ツライチになるようにと)そこまで徹底したとのこと。
ボディやガラスの肉厚の薄さに自信がなければなかなかできないことです。

トミックスの製品化とタイミングがほぼ重なってしまいましたが、カトーとしては「室内をもっと別パーツ化して豪華に…」とかそんなことは全然考えずに、「上品な、大人のための瑞風」を目指して、ただひたすらに美しい外観を再現することに決めたそうで、そんな目標をチームで掲げて、カトーブランドでプロデュースする模型の「絶対的価値」を打ち立てることにしたんそうです。

つまり、何かと比べてとか、一般型車両を横に置いて引き立つとか、そういうことではない。
あえて言うなら、この「瑞風」がただ直線レールの上にポツンとあるだけでも価値を感じ取ってもらえる模型、ということなのでしょう。

我々は、模型メーカー間での競作が起こると、近視眼的に各部位を比較して、その優れた点やギミックの優劣のトータル獲得点数で「優れた模型」かどうかを判断しがちです。
ですから「四季島」に関しては部品の数が多いだけトミックスのPGに軍配…となる傾向にあるのです。
確かに「ここまで作り込みました」となると「へぇー」となります(現に昨年の全日本模型ホビーショーでの当方の感想がそうでした)。
ちょうどドールハウスを見たときのような感激、と言えば分かりやすいでしょうか。
模型ってフタを開けて「のぞき込む」という行動が条件反射的に起こりがちですから。

しかし今回いろいろと説明を伺ってみると、競作となった際に鉄道模型を選ぶ選択肢って「決してそういうことでもないのかなぁ」という感想も持つようになりました。

模型店で買って帰り、箱から出してみて手に取る。
そのときに「うわぁ、すごい!」と思い、普段は無関心な家族に「見て見て、すごいよコレ!」と言って共感を求めてしまう、そんなことって今までにもあったような気がします。
そのポイントは何なのか、そしてどこなのか。
それぞれのユーザーによって違うことはもちろんですが、今回の「瑞風」を見ると、「部品数」や「価格」で決まるものでもない…ということは言えそうですよね。

模型をリリースする側の「この車両を製品化するということはこういうことなのです」という強いメッセージ。
これが、箱を開けた瞬間にズバンと飛び込んでくるかどうかなのでしょう。
この「瑞風」、豪華列車にアレルギーがありながら、ちょっと楽しみになってきました。



□ □ □



この後は会場外で、いつもどおりに特別顧問を迎えての時事放題となりました。
いつも本当にありがとうございます。


少し前までは蕨方面だけの話となっていましたが、気がつけば今はどのメーカーにおいてもリリースする模型の価格が上昇傾向にあります。
それは生産拠点の人件費の問題だけでなく、構成部品数の増加なども要因と言えそうで、その点でユーザーとしては「仕方がない」という諦めがありました。
なんとなく事情は飲み込めますからね。

しかし、それだけとは思えない事例も頻出するようになっています。

あえてユーザーから見た推測を勝手に言わせていただきますと、それは「生産数の少なさ」が主な要因ではないかと思うのです。
つまり、こうしたショーで華々しく「今度はこれをやります!」とアピールしてはいるものの、実は企画としては非常に弱含みで、そもそも生産数を多く設定していない。
だから1つ当たりの価格が高騰するのです。
んでもって例の「メーカー在庫なしです。完売御礼!」という、分母の数が示されないままの謎のアピール(こういうメッセージをもって人気商品だと思うのは短絡的ですぞ)。

確かに、これまでに全く模型化されていない車両というのは、あまり残されておらず、見当たらなくなりました。
その「残弾数」は市場全体で底を打ちつつあるのでしょうが、問題は、それをそのまま「もう無いもんな」「仕方がない」と片付けてしまう、割り切ってしまうかどうか、です。
もし、そうであるならば、この市場はそんなに先が長くないように思えます。


新しい価値は、付け焼き刃的に雑誌などを見る「お勉強」などで創造できるものではありません。
日頃から「おもしろい」とか「おいしい」とか「うつくしい」とか、何事にも対する肯定的な興味の積み重ねがあってこそであり、その積み重ねが他者に向けた強い提案の源泉になるのです。
皆さんの身の回りにはいらっしゃいませんか?
一緒に旅行して、旅先でポロっと「でさ、ここに来て何が面白いの?」って言う人。

今回の会場でも、その積み重ねができている新企画とそうでない新企画を見ました(あえて「メーカー」とは言わずに「企画」と言います)。
この日の最初に諸レイアウトを見学した際には、そうした価値の持ち方のトレーニングができている方々にお会いでき、お話も伺うことができました。
質問すると実に面白い答えが返ってくるのですよ。
お持ちになっている視線が独特でユニークで。
どこか嬉しくなりました。

市場の上流にいる各メーカーにおかれても、そうした「強さ」を持って、市場・業界全体をリードしてもらいたいですね。
そうすれば、価格も多少は下がってくるでしょうか(分かりませんけど)。



情報鮮度が落ちる一方の中で、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
次回からは通常運転に戻ります。

ではまた。
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  1. 2019/08/23(金) 21:30:00|
  2. 鉄道模型イベント
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  4. | コメント:6
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コメント

レポートありがとうございます。
瑞風の競作は想定通り。それしかないから。
来年、TOMIX が ななつぼし をやるかどうかはわかりませんけれど。

うめだ阪急での展示会に行けませんでしたから、写真だけでしか見ていませんが。
中身も重要かもですが、まずは外見でしょ。
いまのところ買うとしたら、KATO かな。

次のネタ、伊豆急ときて、ゆうマニととく、北海道 ・・・くらいですかね。
模型的にも、機関車 DF200 どっちも持ってますから。
少し弱いかもですが、首都圏でも…と思ったり。

  1. 2019/08/25(日) 22:50:54 |
  2. URL |
  3. Mu #CnwbxUkc
  4. [ 編集 ]

Muさん

そうですねー、結局は外観が大事。この課題をクリアしてこその内部表現ではないかと、トミックス製品へのインレタ貼りをしながらよく考えます。
  1. 2019/08/26(月) 18:05:30 |
  2. URL |
  3. しなのさかい #-
  4. [ 編集 ]

設計思想で選ぶ時代

お邪魔いたします。いつも楽しく拝見させて頂いております。
特に、レイアウトの一場面ごとに意味のある部材を急がずに選定されておられ、大変参考になります。
瑞風の設計に関してなのですが、
KATOの専用プリズムや見事な成型技術には一刀彫のような職人技を感じますし、
TOMIXの(内装も含め、接着剤を使用しない)別部品化には、組子細工のような美しさがあると思います。
LEDの価格、消費電力は2000年ごろと比較して長足の進歩を遂げており、
いたずらに数を競う(「デュアルLED搭載!」みたいな)だけでなければ時代の進歩と受け入れております。
完成度ではなく設計思想で選べるというのは、恵まれた時代になったものだと思います。
---
TOMIXもヨン・サン・トオシリーズでは車番印刷済み、靴摺り印刷済みとなっており、
先日openしたTOMIXのショールームで水平展開できないか尋ねてみたところ
「技術的には全く問題なく可能である」けれども
「転属歴や複数の所属区がある車両では車番や表記は印刷しない方針である」
とのことでした。
以前から初回限定や「さよなら」セットは車番印刷済みになっていましたが、
新たにマリンライナー「C」「D」セットで車番印刷となりました。
いたずらにアイテム数が増えることは好ましくないと思いますが、メーカーも試行錯誤中なのかも知れません。
長文失礼いたしました。
  1. 2019/08/26(月) 23:49:52 |
  2. URL |
  3. 北陸鉄 #bk6Ecdvk
  4. [ 編集 ]

ありがとうございました

ご無沙汰しております。
大変読み応えのある素晴らしいレポート、ありがとうございました!
KATOの瑞風、技術者達の情熱や拘りが私にもよく伝わります。(自分が観に行ったら観察力が甘くて、ここまで深く感じ取ることは出来ないだろうなぁ)
私は瑞風は買いませんが、ここで培った技術・ノウハウが、今後のKATO製品にフィードバックされるかと思うと、とても楽しみです。
特に室内灯の導光プリズムの技術は興味深々です。ななつ星を始め発売済みの製品にも、新たに専用プリズムを発売してくれたら面白いですよね。
  1. 2019/08/27(火) 21:50:59 |
  2. URL |
  3. やまだ #LLR6AlOk
  4. [ 編集 ]

Nゲージ四大宗教

北陸鉄さん

コメントをありがとうございます!

設計思想というものは、何というか製品から滲み出るものかなぁと思っていて、この思想に乗るかどうかは、正にユーザーの「信徒化」で決まるでしょう(笑)
ときには、その思想がなかなか分かりづらいこともあるので、このような場で総本山からしっかりと説明してもらえるというのはありがたいし、財布からお金を出すときの納得感あるいは豊かさを感じることへとつながるのでしょうね(これではまるで宗教ですが)。

ですからトミックス。
車番は印刷しない、インレタで。これはこれで思想でして、なかなかユーザーの声では動かすことはできないようです(機関車リニューアルはいわば経典の大改変です)。なのでユーザーは、その動かない思想に耳を傾けることができるかどうかで選択したいですね。決してネタではなく。

マイクロエース、グリーンマックスの設計思想をも比較対象として考えてみると自分でもどういう思想が腑に落ちるのか定まってくる気がします。やはり乗れない思想というものはいつまでたってもそのままです。小売店の在庫を見るとよく分かります。売れないものは生産数に関わらず、ずーっと売れていませんから(爆)
  1. 2019/08/27(火) 22:40:42 |
  2. URL |
  3. しなのさかい #-
  4. [ 編集 ]

専用プリズムは設計力を測るスケールか

やまださん

いつもありがとうございます!
既存製品に対応するプリズム、いいですよねー。
汎用プリズムでは点き方がイマイチだとか、そんなものへのリニューアル対応ということでやってもらえると面白いかも。北斗星とトワイライトのスシ24とか。
こうして専用プリズムは3事例目(?)が登場するわけですから、今後もこの仕様、いや設計思想には注目です。室内灯はやはりいいもんです。
  1. 2019/08/27(火) 22:47:18 |
  2. URL |
  3. しなのさかい #-
  4. [ 編集 ]

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