こんばんは。しなのさかいです。

昨年末にカトーから発売された10-1764 クモハ52(1次車)飯田線 4両セット。
お店から持ち帰って、すぐにセットアップしようと思っていたところ、レイアウト工事を優先してしまったために、そのままにし続けてしまいました。
4か月以上の遅れでようやく車両ケースを開け、神々しいカトーの横須賀色を見てニヤッとし、ささっとジャンパ栓受及びジャンパ線、室内灯を取り付けてみました…というのが今回の話題です。
お付き合いいただければ幸いです。

「流電編成」となると、どうしてもその顔になるクモハ52に注目されがちですが、当方は次第にこの編成に欠かせない中間車たちが面白いと思うようになりました。
今回の中間車は「サハ48021」と「サハ48024」。
これらは関西急電のグループではなく、横須賀線向け32系電車に属していたサハ48(サハ48001~サハ48028)のうちの2両でした。
この2両はその後、関東各地と静岡を経て、021は1970年に、024は1965年に豊橋(つまり飯田線)へ転属させられています。
「じゃあ、クモハ52001とクモハ52002の間にあった本来のサハは?」という疑問が生まれてきます。
本来のサハ…
実は「サハ48029」という編成美の整った三等車が「サロハ46018」(→サロハ66020)という合造車とともに存在していたのでした。
サハ48029は昭和28年に横須賀線へ転属。
昭和38年頃には3扉化改造により「サハ58000」に改番されて宇野線へ…と、クモハ52とは運命を共にできなかったようです。
今回の流電編成は、中間車のすれ違いの運命によって生まれた、言わば関西と関東の文化の融合による編成、ということもできそうなんです。
サハ48021
サハ48024021と024は構造的に同じはずなのに、前位と後位が逆というミステリーがあるようで、印刷でもこの事実が反映されています。
それだけでなく、リベットの列数の差異も両車で作り分けるという金型レベルでのこだわりが。
起こす金型数の制約から合理的な発想で設計されることが多いNゲージの中で、今回のセットには「ここだけは」というこだわりがあったように見受けられます。
少なくとも調査不足による「エラー」が生まれる気配は、カトーの飯田線旧国シリーズに関してはほぼ皆無でした。

サハ48は出自が異なると言いましたが、それでもかろうじてクモハ52001、002とともに小窓が並ぶ外観となるため、この4両で組成されると「比較的美しい編成」と評価される向きがあったようです。
ウインドウ・ヘッダーの高さが若干違うためだからか、屋根下の青15号の塗装幅が揃いませんが、許容範囲、ということですかね。
「良いことにする」といった心の中の整理が旧国とのうまい付き合い方の一つなのかも。
飯田線にいたサハ48は計3両。
流電の正統派流電中間車である「サハ48034」(元サロハ66016)は10-1288で製品化されましたから、これにて3両はコンプリートです。
10-1288の発売当初は「なんで片側だけがクモハ52のセットにしたのだろう?」という疑問がありましたが、今振り返れば飯田線旧国コレクションには欠かせない4両セットで、もし先に両端クモハ52の編成が発売されたなら、製品化の可能性は低かったかのかもしれません。
10-1288の発売はもう8年も前のことだったりします。
2015年8月25日「KATO クモハ52004+クモハ54100 飯田線」
クモハ52001にはジャンパ栓受とジャンパ線がそれぞれ別パーツ化されました。
よって栓受は青15号、線は黒という色分けが。

でもこれはクモハ52の流線型が、テールライトと同様に栓受を飛び出させていることからの合理的かつチャレンジングな設計なのかもしれません。
従来の「ジャンパ栓」パーツが栓受と線とで分離するとなると取付作業も大変になるのでは。
クモハ52の奇数車は今回が初めての製品化でした。

駅に佇むクモハ52002。
背景に黒い貨物列車があると、より飯田線らしく見えます。

こんな走行シーンを肉眼で見るには、もう少し早く生まれている必要があったようです。
でもまぁ、こうして手元でいつでも再現できるようになったのですから。
ありがたいことです。
蛇足ですが。
ある意味で“レジェンドコレクション”な蕨方面のクモハ52と比較できないのが残念です。
今から20年前。
2003年6月に現れたNゲージ初の完成品としての流電製品は、今回のカトーの4両と全く同じ内容だったんです。
梅雨空の中、新宿の「さくらや」の新製品展示コーナーで他のお客さんと共有したあの時間と空間は一生忘れられない宝物となりました。
何故か、誰もが展示品を見たまましばらく動くことがなかったと記憶しています。
前述の「サハ48029」はその蕨方面でしっかりと製品化されとりますので、興味のある方は是非。
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2013年から始まったカトーの「飯田線シリーズ」。
これまでに数々の「シリーズ」が銘打って走り出しましたけど、カトーにおいてここまで長く、かつ尻切れにならずに走ってきたシリーズは、同社の中でほぼ見られませんでした。
いや、正確にはこのシリーズも尻切れになるところでしたね。
当方は1年以上前にそんな懸念を指摘していました。
2022年2月11日「もう一度、飯田線に帰ろう。」

数年ぶりに新しいカトーの飯田線の旧型国電が発売され、それとともに同シリーズ内の旧型国電は今回と次回(2次車)で終了すると、しっかりアナウンスされています。
振り返れば、足掛け11年のうちに、そこそこの量の旧型国電が手元にある訳で。
ユーザーがこれらを活かすために何かを取り組んでこその「飯田線シリーズ」のエンディング、いやエピローグ。
その辺りのヒントがあれば…と思い、4月末に総本山を参拝してきました。

およそ100名の観覧者が来場したため、急遽椅子が追加されました。
それでも立ち見が出現したほど。
当方よりも御年配の方々がほとんどでしたが、鉄道模型への向き合い方については世代を越えて同じ姿勢なのではと思いました。

会場で撮影許可がありましたので1枚。
2次車は5月23日発売予定だそうです。
再びこちらを囲みながら、近日中にあれこれと考えてみることとしましょうか(^^)

ではまた。
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- 2023/05/17(水) 23:00:00|
- 鉄道模型(車両)
-
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-
| コメント:6
クモハ52は買ってみて、気持ちが上がる製品ですね。
その理由は仕上がり品質の良さにあると思います。
一つは、塗装の良さでして、運転台正面の塗り分けについては、工作がお上手な方でも難易度が高い部分だと思うのですが、この部分の塗り分けがとても綺麗に決まっていて、これ以上は求めようがないというように、品質の高さを実感できる部分です。
もう一つは、きちんとクモハ52の姿になっているという点でして、これは監修のような仕事をされた(と思われる方)がきちんとデッサンをチェックしたのだと想像しています。メーカー製品情報によれば、考証をかなりきっちりやっているようですが、そもそもの造形が似ていることで、「木を見て森を見ず」にならずに済んでいるのだと思います。
前回は製品価格に溜息をつきまして、昨今の工賃上昇が製品価格上昇の圧力になっているだろうと想像していますが、今回は違う溜息が漏れてきそうで、「精密化」のみが良い模型ではないよ、というように静かに訴えかけてくるような製品でした。
さて...新製時のように美しい模型なのですから、こうなれば博物館で実見した「いにしえの急電」をNゲージの世界でも見てみたいなと、邪な気持ちを引き起こすようなちょっと罪づくりな模型ですね...笑。
- 2023/05/20(土) 10:13:01 |
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- 連接車 #bDO6Upxo
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独特の発車時刻入り行先標を差し込んで豊橋駅に佇む姿を、夜間早朝に通過する寝台特急から見かけていた記憶しかない自分ですが、「これが売れてくれたら、ゆくゆくは仙石線のウグイス色まで辿り着いてくれるかな?」的な願掛け買いから始まって、気が付けば80系や貨車機関車も含めて飯田線旧型電車シリーズ全車をコンプリートする結末を迎えようとしています。
113系115系のボディにのせたとしたら「艶も控え目で、少し薄くない?」と思えていたKATOのスカ色の調色の理由がわかったり、日を置かずにホビセンとショーとで観た試作品のわずかな違いに気が付いて「んむーっ!」って痺れたり、ドア深さ実現のためにこれまでの組立セオリー変えてしまったり、専用カプラーは今や定番と化していたり。予定外の出費であっても何とか耐えられる程度のセット構成価格設定は、その後を思い出せばちゃんとそれに見合った買い物ができたと思える物ばかりでした。
このシリーズに注ぎ込まれたリソースだけではなく、スピリットの部分が今後あるいは現在進行中のシリーズにも受け継がれ続けてくれること、言わば造る側にいる人たちの習作として長く残ってくれることを願って止みません。
- 2023/05/21(日) 10:04:38 |
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- 海無し #-
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連接車さん
クモハ52の正面の塗り分けは滲みもなく素晴らしいですよね。サボ受けのところにクリーム色がかかる部分なんて手塗りでも大変ですが、ちゃんと決まっています。飯田線のスカ色はプラ製のマスキング用カバーで覆いながら吹いていると聞き及んでいて、それでも吹き込みがないのですから。ボディとカバーそれぞれの金型の精度、カトーの技術力が窺い知れる側面だと思います。
「精密化」はユーザーが「求めているから」と総括されがちですが、本当にそうだろうかと立ち止まって考える時期に来ているのかもしれませんよね。コンビニが黎明期にそう歓迎されたとして括られていましたが、本当のところは人間のライフスタイルが「コンビニ」の出現で大きく変えられたという見方もあるでしょう。
Nゲージの車両という「木」だけを血眼になって見るようになって、いつのまにか「森」が見えなくなっていないか。「森」がなんなのかは捉え方次第でそれぞれですけど、加藤祐治氏が始めたNゲージというスケール、ジャンルには「森」が展開される余地を含んでいたような気がしています。飯田線シリーズの安定的な品質で進む展開からは、そのおかげで飯田線の世界であるとか、流電の昔の姿を「知ってみようかな」という、なんと言いますか心の中のゆとりのようなものを生じさせてくれる何かが滲み出ていました。一つの模型を手にしてそこまでアレコレと考えることができるとすれば、その模型を買うことは相当お得なのですよね。
- 2023/05/22(月) 09:02:36 |
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- しなのさかい #-
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海無しさん
飯田線シリーズに関しての「予定外の出費であっても何とか耐えられる程度のセット構成価格設定」との御指摘は、当方も考えていたことでした。流電編成を除けば基本的に2〜3両単位でのセット販売でしたから、毎月のお小遣いでも全然カバーできました。なので3か月スパンで新製品が発売されても追いついていくことができたんです。
旧型国電ならではの特色を活かした、かつての単品模型を増やしていくような緩い集め方ができました。
今はフル編成15両を一気に配備しなければ後々で厄介なことになることがほとんどで、それもそれで仕方のないことではありますが、「昔はこんなペースでの買い物がメインだったよな」と気づかせてくれる展開には、どこか自分の中での原点への回帰を必要とさせる示唆があったようです。
「細々と買い集めていくと何か楽しいことが待っている」。飯田線シリーズのスピリットが、金型などのリソース面だけでなく、企画展開の面に活きることを願っておくこととしましょうか(^^)
- 2023/05/22(月) 09:05:13 |
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- しなのさかい #-
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ひさびさに失礼します。
先日のホビーセンターでの“座談会”いらしてたのてすね。私も聴衆の一人でした。ご挨拶もできず失礼しました。
さて本日、飯田線シリーズの掉尾を飾る流電2次車を落掌しました。第一弾と同じ窓割のサイドビューを眺めながら、遅れてきた青春というか、アツい日々の記憶も蘇り、一人しみじみとしております。まだまだ欲しい車両はありますが、大本命の登場はまさに潮時なのかもしれません。片流電も、あれがイマイチ売れなかったせいで本命がお蔵入りになるのではと疑った時もありましたが、こうして5両コンプリートできた今となっては貴重な企画でした。足掛け11年、後半は失速ぎみでしたので、みなさん健康かつ楽しい気分で手にできていればいいのですが。
シリーズは終了してしまいましたが、大量に製作されたであろう金型はなんとか活かしてほしいものです。クモハ54+クハ68の未塗装品なんか出してくれると楽しめそうなんですが。単色ならハードル低めですし、“タイプ”で我慢できない人は作り込めばいい。かつてキハ58のアンデコ(ボディのみですが)なんていうのもありましたが、時代が許さないか。
と、そんな感慨もつかの間、そうなんですよ、またスカ色が来るんですよ。その後はクリームとアズキ色がダブルで。先日寝台列車も来ましたし、茶色い機関車も来ます。なんだかおじさん向けのアツい日々になってますが、巣ごもり需要のライトユーザーが去ったのでしょうか。しかし、なんでこう固め打ちなんだろう。キユニや先日の581系(私も入手できていませんでした)なんかはあきらめちゃいました。価額上昇だけでなく、家族の目とか収納場所とかいろいろあるんですよ。KATOさん、採算性を言う割にはあいかわらず商売下手だなぁと。211系どうしよう…。
- 2023/05/25(木) 22:31:51 |
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- 妙高讃歌 #-
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妙高讃歌さん
コメントをありがとうございます。
あの会場にいらっしゃいましたか。こちらこそご挨拶もできず…ですが、これはもう仕方のないことですよね。
既に2次車たちをお迎えされたとのことで、この週末はさぞその模型たちの後ろに背景が見えてくる至福の時間を過ごされるのではないでしょうか。当方もこの週末には同じ思いをすることができそうです。
最後の質問コーナーでも声が上がっていましたね。「飯田線以外での展開はやっぱりない?」と。飯田線と比べると大糸線は商業的に「売れない」気がしていることが大きかったけど、①11年間でまだまだ使える金型を多く残した、②KATO製品には大糸線を走る車両がたくさんある、というアンサーがありましたが、実はこの質疑応答シーン、本件飯田線シリーズのみならず、あらゆる車両模型の展開に当てはまる普遍的な思考パターンがさりげなく披露されたのではと(会場の後ろの方で)唸ってしまいました。
金型は計算して製造されるべき。寸法のことではありません。製造当初は「損」でも将来の応用を見定めて長い年月で「得」を見る。こういう計算が企画の展開の中に、ユーザーの気づかないところにあって、このことがメーカー希望小売価格に反映されていたんでしょう。その金型流用が堂々と効いた新製品が次々と加わって「ワールド」を見せてくれたとしたら、これはもう。
毎月鬼のように店頭に流れてくる新製品はどんな金型で作られているのか、無駄な金型に見えたりしやしないか(ユーザーがそこまでの新規・別パーツ化を望んでいないとか)、今は、ポスターに掲載された誰かの鉄道写真を見て買おうかどうしようかと悩む前に、どういう意図や背景で製品化が決まったのかという点を想像していったり直接聞く方が良いんじゃないか、メーカーの意図が見えにくくなった今としては尚更そんなことを思う次第です。かつての『Nゲージ大図鑑』に掲載されていたメーカー各社の濃厚なインタビュー記事は数少ない発信源でしたね。
- 2023/05/26(金) 20:08:19 |
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- しなのさかい #-
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